産業競争力会議から見ると「残業代ゼロ」という単純な話ではないみたい

残業代

「残業代ゼロ」のニュースが話題になっています。朝日新聞の見出しは、

「残業代ゼロ 長時間労働の歯止めなし 抵抗できぬ働き手」

となっていて、これをベースにテレビのインタビューは、

「残業代ゼロはさすがに困る」

と新橋のサラリーマンが言うという、ベタな展開になっています。どうもきな臭い感じを受けたので、先日の産業競争力会議の配布資料(原本)を読んでみました。すると、そんな単純な話ではない事が見えてきました。

まずは経済同友会代表理事で、武田薬品工業代表取締役社長の長谷川閑史(やすちか)さんの配布資料を原文のまま、抜粋していきます。資料冒頭部には、こう記してあります。

少子・高齢化、人口減少社会の本格的到来の中で、時代や個人の価値観・ニーズの変化に対応し、グローバルに通用する「働き方改革」に早急に取り組むことが求められている。

そして、働きすぎの防止という項目の冒頭では、

「働き方改革」を進めるにあたっては、働き過ぎ防止に真剣に取り組むことが改革の前提となる。同時に、無駄な業務の削減をはじめ、時間当たり生産性を高めるための効率的な業務運営を確立し、創造的な成果を実現していくことが期待される。

おっしゃりとおりです、今までと同じやり方が今後数十年続くと思っている人はいないでしょう。では新たな働き方って、なに?という事に関しては、こんな例がありました。

子育て・親介護といった家庭の事情等に応じて、時間や場所といったパフォーマンス制約から解き放たれてこれらを自由に選べる柔軟な働き方を実現したいとするニーズ。特に女性における、いわゆる「マミー・トラック」問題の解消。

グローバル化の進展に伴い、国際的な業務において時差に関係なくリアルタイムのコミュニケーションに対応した働き方のニーズ

マミー・トラックって、仕事と子育てを両立する代わりに、昇進を捨てるということです。海外との電話会議って、時差の関係で日本の一般的な勤務時間と合いませんから、これも書いているとおりです。

どちらも、一律の労働時間管理が弊害となっています。この一律を解消しようと提言しているわけです。残業代ゼロ~、え゛~っていう単純な話ではありません。

次に有識者へのヒアリング配布資料というのもあったので、こちらも抜粋します。まずは有限会社アイズプラス代表取締役 池照 佳代氏のコトバです。

仕事を居る時間で測る文化が未だあり、働く時間に制約があると、短時間勤務という時間を減らす制度しかない。これは考えなければいけない。短時間勤務、育児休業だけでなく、労働時間を自分で調整できる多様性がもっと必要。

育児をしながら組織で働き続けるようにするためには、制度だけでは不十分であり、制度利用が可能な風土・文化を醸成し、社員の意識を高める必要がある。

冒頭にある「仕事を”居る時間”で測る」という言葉にものすごく共感しました。育児や介護などで不在にすることへのやっかみって、残念ながらあります。株式会社リクルートホールディングス リクルートワークス研究所長 大久保幸夫氏のコトバは、

労働者の8割が繁閑差が激しいサービス業で就労していることを強く意識して議論をすべき。労働時間を 1年単位でもっと柔軟性を持たせることが必要。繁閑に合わせて大胆に労働時間を増減できる制度改革が必要。

これから人口構造が急速に高齢化していくので、移民を受け入れないと労働力が確保できないという話までありますが、こういう働き方の変更で “眠っている労働力” を掘り越し、活用できます。

「9時5時の一律な時間管理でなくって、いろんな柔軟な働き方ができるようになる」

ってところが大切であって、一般社員の残業代ゼロという単純な話ではない事が分かります。ブログで全部ご紹介するのは限界がありますので、産業競争力会議の原本を読んでみてください。なるほどステキな議論がされています。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/skkkaigi/goudou/dai4/siryou2.pdf
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/skkkaigi/goudou/dai4/sankou1.pdf

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ABOUTこの記事をかいた人

35歳転職限界説を突破して2回内定をGet、5つの会社を渡り歩いたジョブホッパー。人生トータルでは日系・外資系企業合わせて8回内定。ムダに転職活動経験が豊富で、転職エージェントを11社利用する。マネージャーとして面接官の経験もあるため、採用する側の論理も理解している。転職完全ガイド(晋遊舎)という本に、わたしの転職ノウハウが掲載される。